男性の不妊とは?
不妊の原因について、その半分は男性側にあることを知っている人はどの位いるのでしょうか?「不妊治療」や「不妊症検査」の受診者数は、依然として女性の方が多いのが現状で、女性の側にのみ問題があると思ってしまっている方も多いようです。
そこで、今回は「男性の不妊」にフォーカスしてみたいと思います。
◆男性不妊の最大の原因「造精機能障害」
男性の不妊症の種類や原因にはどんなものがあるのでしょうか?男性の不妊の原因の約9割は、「造精機能障害」と言われています。つまり、精子をつくり出す機能自体に問題があるため、精子を作ることが出来ない状態ということになります。そのため精巣や内分泌系(ホルモン分泌等)の異常が発生し、障害を起こしてしまいます。
正常に機能している場合は、一度の射精に含まれる精子の数は数億と言われています。その中で子宮の前で99%が死滅してしまい、子宮までたどり着く精子は数十万以下にまで減少し、最終目標である卵子の周囲まで到達出来るのはわずか数百にも及ばないと言われています。そのため精子の数が元々極端に少ない場合や、運動性が低い場合は卵管に到達する精子が大変少なくなってしまうため、妊娠しにくい状態になってしまいます。
この「造精機能障害」についてもう少し詳しく見てみることにしましょう。
◆精索静脈瘤
精巣に血液が逆流して精巣の静脈血管が瘤(こぶ)状に腫れてしまっている状態です。精索静脈瘤が出来てしまうことによって、陰嚢内の温度が上がってしまいます。そのため精巣の発育不全などを起こしてしまい、精子形成に悪影響を与えてしまいます。男性の不妊症の40%にこの症状が見られると言われています。
精子不動症や精子無力症の原因のひとつになっています。
◆無精子症
「無精子症」は、造精機能障害の中でも重い症状になります。その名の通り、精液中に精子が一匹も存在しない状態になります。ただし、精巣や精巣上体に精子が存在していれば、顕微授精などの不妊治療を行なうことで受精・妊娠が可能になります。
この「無精子症」が起こってしまう原因として、次のようなものがあります。
☆閉塞性無精子症
「閉塞性無精子症」は、精子の通り道である精管の一部が詰まってしまったために癒着してしまいます。そのため精子が運ばれなくなってしまい、精液のなかに精子がいなくなってしまいます。
☆先天性精管欠損
「先天性精管欠損」とは、生まれつき精管が備わっていないため、精子は精巣内に閉じこめられてしまい、精液の中に精子を入れることが出来ません。
◆乏精子症
「乏精子症」は、精液の中の精子の数が少ない状態になります。精子の数が基準値を少し下回る程度の場合は、不妊治療としてまずはタイミング法などを行ないます。
精子の数が基準値よりもかなり少ない場合は、人工授精、体外受精、顕微授精等の不妊治療を行なった方が有効です。
「乏精子症」の原因としては、「精索静脈瘤」がありますが、それ以外にも喫煙や多量の飲酒などの生活習慣にも大きく関係していると言われています。
☆精索静脈瘤
「精索静脈瘤」は、精巣(睾丸)の静脈にお腹から血液が逆流してしまったために、瘤(こぶ)状のものが出来てしまった状態を指します。精索静脈瘤が出来てしまうと、お腹から逆流した温かい血液が精巣(睾丸)の温度を上昇させてしまいます。その温度上昇によって精子が死んでしまったり、運動率が低下してしまったりします。
◆精子無力症/精子不動症
「精子無力症」は、精子の数は正常な数量なのだけれども、精子の運動率が低いため、卵管までたどり着くことが出来る精子の数がとても少なくなってしまいます。その精子の運動率の状態に合わせて人工授精や顕微授精などの不妊治療を行ないます。
「精子不動症」は、精液の中に動いている精子がいない状態を言います。けれども全ての精子が全く動いていないというケースはあまり多くありません。少なくとも何%かは動いているものですが、中には全く動いていないという場合もあります。
また、「精子無力症」や「精子不動症」の原因としては先天的なものと後天的なものがあります。後天的な原因としては、次のようなものがあります。
☆膿精液症
「膿精液症」は、前立腺や精嚢等に炎症が起こってしまったことで、精液中に白血球が増えてしまうことで、精子の運動率を低下させてしまいます。
☆カルタゲナー症候群(副鼻腔炎、右胸心、気管支拡張症)
「カルタゲナー症候群」がある場合は、精子が完全に動かなくなってしまいます。
◆性機能不全による不妊症
また、男性の不妊症の原因として、遺伝的な要因や発育段階で受けた影響等によって、性機能不全によるものがあります。性機能不全とは、性的な欲求や性的興奮とその最高潮などの状態が、減退してしまったり欠如してしまったりする状態のことを指します。
勃起障害(ED)、早漏、オルガスムス障害・遅漏等がこれに当たります。
◆男性不妊症の検査方法
男性の不妊症の種類や原因について見て来ましたので、男性不妊症の検査にはどのようなものがあるのかご紹介しておきましょう。
1.精液検査: 精液中の精子の数量や運動率をチェックします。
2.染色体検査: 採血によって染色体異常がないか検査します。
3.ホルモン検査: 精巣の機能を検査します。
4.抗精子抗体: 精子に対する抗体が血液中にあるかどうかチェックします。
5.Y染色体検査: Y染色体上の無精子症に関する領域に遺伝的な欠損などがないか検査します。
6.AMH(アンチミューラリアンホルモン): 男性不妊に関する生殖細胞の指標になると思われているホルモンについて検査します。
不妊症の検査として女性が受ける検査についてはご存知の方も多いとは思いますが、男性の不妊症の検査内容については、あまりご存知ない方も多いのではないでしょうか?不妊の原因の約半分は男性側にもあるという現実を踏まえた上で、より効果的に不妊治療を行なうためには、男性にも以上のような検査を受診されることをお勧めします。